株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2020.06.25

テレワーク社会とは異なるコンセプト

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

新型コロナをきっかけに、テレワークの推進に拍車がかかりました。
エマリコとしては、都心の社員食堂向けの売上が下がってしまっているのが残念ですが、多摩エリアの経済的にはプラスではないかという説もあります。都心に行かなければ郊外の昼間人口が増えるからです。
多摩エリアのまちづくりを考える者としては歓迎すべきことです。コワーキングスペースやその類のハードの整備も進むことでしょう。

ただ、安易なテレワークはよくない結果を生むということは、企業単位では間違いないところです。
いちおう申し添えると、エマリコくにたちは本社事務所(と呼ぶのもおこがましい)にはフリーアドレスの小さな机が3つしかなく、事務作業はカフェや自宅、直営飲食店のテーブルでしてもいいので、もともと一つの所に集まりません。販売や集荷があるので出社することにはなりますが、店舗の場所もバラバラなので社員どうしが顔を合わせる機会は一般企業よりはかなり少ないと思います。
店舗に出社する点ではテレワークというのとは違いますが、会う機会が少ないという意味では同じです。

で、これは経営する者としては結構きついものがあります。
ひとつには、社員ひとりひとりの体調やモチベーションを逐一確認できません。
また、ノウハウやアイディアというものは、1+1=2という足し算で作られるものではなく、掛け算です。なので、掛け算が繰り返される環境の方が早くノウハウを蓄積することができます。

山中伸弥教授の研究所は、セクションごとの壁がなく、1フロアぶち抜きです。
再春館製薬所のオフィスも1フロアぶち抜きであることも有名です(真ん中にコールセンターがある)。
最近は評価が下がっていますが、WeWorkのコンセプトも同様です。

テレワークすなわち善、とする経営手法は、こうした発想と真っ向から対立するものです。テレワークでは、壁がないどころか、10kmとか100kmとか離れてしまうわけですから。
もっとも、チェーン展開している企業は、当社のような小さいところも最大手も、社員同士が会わないという意味ではずっと昔からテレワークみたいなものですから、そのチームづくりのノウハウはテレワーク推進時には役立つかもしれません。
たとえば、セブンーイレブンが、創業来、全国からOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)を一同に集めて会議をやっていることも示唆的です。そういう細やかな配慮があってはじめて、テレワークはあるいは成立しうると言えます。
とくに新人教育や中途入社の人をその組織に馴染ませる際(と言うと悪いニュアンスにもなるが)において、かなりの困難が生じることでしょう。

もっとも、細やかな設計をせずとも、短期的にはテレワークが生むプラスもあるかもしれません。
1)既にその業界で確固たる地位を築いている場合。あるいは、もともと業務が定型的な部署の場合。
(新しいアイディアやノウハウがさして必要とされていないので)
2)無駄なハンコや無駄な会議が多かったりして、その非効率が是正される場合。
(本質的にはテレワークによって効率化するわけではない=テレワークに関係なく改善できたはず=が、テレワークには否応なくそうさせる効果がある)

こうしたケースでは、「テレワークが利益を生んだ」と言われることになると予測しますが、本質的効果ではないので注意が必要です。
また、テレワークを導入できる企業は利益が高い傾向にあると思うので、実際には相関関係にすぎないのに、「テレワークと利益には因果関係がある」という論文も登場しそうです。(「壁ぶち抜きオフィスと利益には因果関係がある」という論文もありそうだが、これは真逆のことを言っている。)

で、まあ、本稿はテレワークをことさら腐したいのではないのです。
私は、多くの人がテレワークを推進したいところの本当の理由は、「満員電車はいやだ!」にあると思っています。
(私も毎朝、登戸駅から日比谷駅まで通勤していた時期があります。なかなかの苦行でした!)

とすれば、答えは違ってきます。
再春館製薬所のような素晴らしくきれいなぶち抜きオフィスを、多摩エリアに作ることを主流にしよう!ということを提案したいのです。
(我田引水、ばんざい!)
賃料は都心に比べて安いですし、かといって都心に用事があれば遠くはない。そして野菜も美味しい笑。
満員の通勤電車は必要ないかごく短時間で済みますし、かといって社員どうしがわざわざ離れて仕事をしなくてもいい。なんとなれば社内に託児所も作ったらいいと思います。
育児ひとつとっても、社内に託児所があって同僚も含めてみんなで面倒を見る企業と、バラバラに育児しながら自宅(ないしは近所のカフェ)で仕事をする企業と、どっちにロマンがあるかといえば、明らかに前者ではないでしょうか。
ま、それは私の主観ですけども。

テレワーク社会よりも、非都心集中社会。
それを目指しそうじゃありませんか。
そして、多摩エリアはとってもいい場所ですよ~!断然、おすすめです。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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