株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2020.07.20

覚えきれない多彩な品種と、ただひとつの「正解」

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拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

写真は、先日行われた食事会イベント『農家と食べよう! in東京農村』ときにお出しした料理です(料理提供:東京野菜キッチン SCOP)。「2種のビーツと東京産米のリゾット」。鮮やかですね!ビーツの甘みがじんわりとお米にしみていました。

ビーツは、もとより”てんさい”の仲間ですから、しっかり加熱すると甘いんです。
もっとも、品質のよいビーツでないと、甘さを引き出すことができません。

ビーツをはじめ、この日の野菜は、ケールやラディッキオ、真ん丸なフィレンツェ・ナスなど、珍しい野菜ばかり。東京西洋野菜研究会の野村辰也さんが持ってきてくれた、イタリア原産の野菜です(栽培地はもちろん東京です)。
※東京西洋野菜研究会について… http://tokyovege.mystrikingly.com/

↓野村さんのトークを、ワインと一緒に楽しみました。

東京西洋野菜研究会の野菜は、当社が販売コーナーを頂戴しているスーパー「丸正総本店」(四谷三丁目)でも人気です。
あまり見かけない野菜なので、導入当初は売れ行きを心配していたのですが、しっかりとお客様に評価いただいているようです(東京西洋野菜研究会の荷造りがきれいなのもあると思います)。

『農家と食べよう! in東京農村』は2回目なのですが、前回は伝統的な野菜である東京うどを取り上げました。
今回はまだまだ珍しいイタリア原産の野菜たちということで、新旧の品種の攻防がこのイベントの裏テーマになってきたのかなあ、と思っています。野菜の品種に栄枯盛衰があることは、別の回で書きました。

実際のところ、野菜の品種はものすごく多くて、専門家でもすべて把握するのは不可能です。
大手・中小の種苗メーカーが日夜努力して開発していますし、自治体の研究所でも研究されています。
トマトの「桃太郎」(タキイ種苗)だけでも、たくさんあるのをご存じでしょうか。(ネット通販ですぐ手に入れられる種だけで7種類。桃太郎ピース、桃太郎ファイト、桃太郎はるか……。ちなみに、ネーミングは社内公募で決まるらしいです。)
そうそう、自治体の研究所といえば、東京都農林総合研究センター(農総研)で開発された露地イチゴ「東京おひさまベリー」が今春はじめて販売されたのですが、ダイナミックな大粒なうえに収量が思ったより多く、来年以降、とても期待しています。

ところで、そのように多種多様な種や苗が用意されていれば、農家さんがほかの農家さんと差別化をするのは簡単にも思えます。でも、そういうことでもないんですね。

東京には、珍しい品種を育てる農家さんもいれば、伝統的な品種を入手して育てる農家さんもいます。もちろん、オーソドックスな野菜を育ててもいます(これが多数派)。

しかし、当社の直売所で人気がある農家さんは、品種がなにであろうと、もれなく丁寧に栽培している。もっと言えば、味から逆算して栽培しています。
東京西洋野菜研究会の野菜が素晴らしいのは、珍しいというまえに、単純に美味しいのです。納品されたときに、見るからに丁寧に育てているのが分かります。
良いビーツだから、リゾットも美味しくなるのです。書くと当たり前すぎることですけど。
9年間直売所をやってきて感じることは、品種が珍しいだけでは差別化できないということです。むしろ、いろいろな品種が溢れている現代の野菜栽培では、珍しいこと自体にはそれほど価値がないとさえいえます。
そう、まず、食味。その基礎がなければ。

珍しい野菜は食卓を楽しくしてくれますが、それも栽培技術や美味しさへの情熱という前提があってこそ。
『農家と食べよう! in東京農村』では今後も、そんな情熱の一皿を、お届けしていきたいと思います。

↓CAMPFIREにて、クラウドファンディング展開中!↓珍しい野菜も届く「TOKYO YASAI BOX “SHUN”」の定期宅配コースあります↓
https://camp-fire.jp/projects/view/293417

さて、付録として、今回のイベントには法政大学の学生さんがサポートスタッフとして参加、一皿ごとに感想を寄せてくれたので収録しておきたいと思います。

[Mさん(大学2年生)]
西洋野菜は見たことも食べたこともなかったのですが、農家さんのお話しを聞いて西洋野菜に非常に興味を持ちました。 お料理の方もとても美味しかったです。

【冷菜】白ナスとアサリの揚げびたし
素揚げした白ナスのふわふわでトロンとした食感に白ワインで蒸したアサリがマッチしていて美味しかったです
【温菜】ナスフィレンツェのラザニア風
グリルしたナスに濃厚なチーズとトマトソースが絡まっていてとても美味しかったです
【野菜】東京野菜のバーニャカウダ
黄色ビーツ(ルナ)を初めて食べてみましたが、生野菜特有の臭みがなく非常に甘みを感じました。東京野菜の中でもトマトが1番お気に入りです
【肉】TOKYO-Xのタリアータ
脂の甘みが強い東京産の豚と爽やかな苦味があるラディキオとケールがうまい具合に調和していて良かったです
【〆】2種のビーツと東京産米のリゾット
歯ごたえのあるビーツともっちりしたお米がマッチしていて食感と味両方とも楽しむことができました。農家さんのお話を聞きながら料理を食べると、より野菜の味を感じることができ非常に楽しく食事することができました。

野村さん、本日は非常に貴重な体験ができました。ありがとうござます。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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