株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2021.10.31

野菜はタダ同然になる?!

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拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

いまマーケティング方面で、『プロセス・エコノミー』(尾原和啓・著)がちょっと話題です。

で、その要旨もあとでちょっと触れますが、とまれ、農業界にとってすごく衝撃的なことが書いてあり、「2050年には、食べ物に限らず衣食住はタダ同然になる」というのです!
おっと、だとしたら、農家も私たち流通企業も成り立たなくなってしまいます。

その部分を引用すると、
「植物工場では、LED電球が太陽の代わりに照らしてくれて植物が育ちます。
つまりLED電球を光らせるために使う電力が、野菜の価格をほぼ決定します。(中略)2050年には、太陽光発電の電気代が今の10分の1になる可能性が十分にあります。1kWhが2円、つまり1時間あたり2円の電気で野菜を作れるようになれば、野菜の価格は信じられないほど安くなります。
食べ物に限らず衣食住はタダ同然になり、生きていくために働かなくてはいけないという時代は終わりを迎えます。」(p.56)

ははあ、なるほど。
流行の本にそう書いてあると、なんだかそうなのかなと思ってしまいますが、そうはなりません。業界のみなさま、ご安心ください(笑)。

この本で、なぜ電気代が野菜の原価の大半を占める前提になっているのか、ちょっと分かりません。
というか、現在の野菜は日光で作ってますが、太陽の利用にかかっている原価はゼロ円です。その点は、LEDの電気代がどれほど安くなっても負けません。

もうひとつ、簡単にあげられる反証は、キノコです。
現時点で、市場のキノコは、ほぼ工場生産と言ってもいい状態です。しかし、「タダ同然」ではないです。もしキノコ栽培の電気代が安くなったところで、スーパー店頭のHOKTOのキノコが激安になるとは思えません。野菜の販売価格は、いろんなコストの集合なのですから。

野菜工場の技術は確かに進歩しています。ある程度、露地やハウスの野菜を駆逐していくであろうことは予測しておく必要があります。まさに、HOKTOや雪国まいたけが市場をせっけんしたように、です。
ただ、果菜類や果物がじゅうぶん安いコストでできるようになるのか、また葉物についても、味についてはまだまだ露地野菜に一日の長があります。

さて、野菜がタダにはならないにしても、『プロセス・エコノミー』が全体を通して示唆していることは、考察しておきたいところです。

たとえば、「洋服のプロに聞いても『ユニクロの3990円のジーンズと、リーバイスの1万円を超えるジーンズ、質に差はない』と言ったりします」とあります(p.9)。
そして、これからのマーケットは、「所属欲求を満たすための消費行動」や「感情価値」、「参加価値」が重要度を増していく。
人もモノも埋もれてしまう時代なので、たとえ少数でも熱狂的なファンを作ることを考えるべきだ、と同書は主張しています。

野菜や果物においても、”プロセス”を発信することで、もっと高く買ってもらうことはできるでしょう。
むしろ、毎日親しんでいる商品だからこそ、そのプロセスをより興味深く感じる人も多いはず。
あんなにも小さな種が、水と太陽と土があれば、栄養満点の作物に育つなんて、そもそも不思議というか神秘的ですしね。農業にはそういう感動の土台があります。

エマリコくにたちは、10年前の創業時から、『背景流通業』というキーワードを掲げています。
偉そうに言えば、時代が追いついてきたということなのかもしれません(笑)。
そして、これからは、背景を伝えるだけではなく、消費者の「参加」というビジネスの形を模索していく必要があります。

せっかく消費地から自転車で行ける距離で、いろんな野菜や果物が作っているのですから、都市農業はその利点を活かさない手はないですよね。

さて、最後にコマーシャルを。親子向け収穫体験事業「農いく!」で新しい試みをやります。
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Feel°C Walkは、その場所で感じることを大切に、「なんとなく気になるもの」を追い求める体験のカタチです。
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菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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