株式会社エマリコくにたち

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社長のBLOG

2020.01.16

朝令暮改オペレーション~アメフト経営試論その3

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

大河ドラマの影響で、明智光秀がフューチャーされていますが、本能寺の変ってすごいですよね。
「敵は本能寺にあり!」
と急に言われる。
きっと臣下は(ええ!織田信長と戦うんか!嘘だろ~)と思ったんじゃないかと推察しますが、それでもきちんとオペレーションが実行されて、信長だけでなくて嫡子も討ち取るわけで、やっぱり光秀はすごいリーダーだったのだろうなと思います。

で、がらっと話が変わりますが、いま米アメフトNFLのプレーオフが佳境です。
(ということで、久々の、何年かぶりの「アメフト経営試論シリーズ」です。って、そんなシリーズあったのか、とお思いでしょうが。)

アメフトというのは、ひとつひとつのプレーごとに作戦を立てます。(ちなみに、ひとつのプレーはわずか数秒。)野球流にいえばサインなんですが、バントとか盗塁といったサインよりずうっと細かくて具体的なものをコーチが指示するわけです。
で、対戦相手は少なくとも1週間前から分かっているので、どういうサイン(プレーコールという)を入れたらいいかという戦略をコーチはじっくり考えるわけです。
そして、このプレーコールはかなり複雑なオペレーションを伴います。なので、その戦略に基づいたプレーを重点的に練習しておくわけですね。
たとえば、「オプション」は、数秒のプレーの最中に相手の出方によって動きを変える、というプレーコールです。やれと言われてすぐできるようなものではないので、たくさん練習する。

ところが、こうした予定の戦略が失敗する場合があります。
前半だけで大量点差を付けられてしまった!オーマイガッッ!
あんなに練習したのに!

しかし。
NFLは、こうした際の試合中の修正(アジャストという)が素晴らしいです。がらっと戦略を変更します。そして、前後半で試合の流れがまったく異なることになったりします。
凡人だと、やっぱり一生懸命考えて練習してきた戦略を、30分(アメフトのハーフは30分)試しただけで変更したりとかできないわけです。もったいなくて。
だって、後半は機能するかもしれないじゃないか!

で、このアジャストがなぜ機能するのかと考えるに、コーチがわずかな時間のあいだに方針変更を決断するのも当然ですが、選手が新しいオペレーションをしっかり徹底して実行するからです。
アメフトではよく、”Do Your Job.” と言いいます。自分の仕事をする。余計なことを考えない。
そういうことも大事ですね。
「え、昨日言ってたことと違うじゃん!」「あんなに練習したプレーコールを出さないなんて?」という気持ちがあったら、コーチの新しい戦略がたとえ素晴らしいものでも、完遂できません。

「朝令暮改」は、企業経営において大事な概念だと思います。
「見切り千両」という言葉もあります。
やってみて、違うなと思ったら、変える。スピーディーに。
はい、記憶消去!

しかし、朝令暮改は言うは易く行うは難し。そのハードルとして、経営者の精神的な囚われがよく指摘されます。「これまで頑張ってきたのに」と思うと、精神的に決断が難しいということですね。
ただ、経営学では「戦略」は柔軟に変える一方で「理念」は変更すべきではないとされているので、この境目もかなり難しいわけですが。ま、それは余談。

でも、朝礼暮改の本当のハードルは、トップが方針転換できるかだけでなく、現場ひとりひとりの遂行力、対応力がすごく大事になります。
ふつう、方針が変われば混乱しますし、疑問も湧いてしまいますので。

つまり「朝令暮改オペレーション」、そういうことができるチームは強いです。
それは短い時間で部下を納得させられるリーダーの力量ということもあるし、何はともあれ目の前の仕事を完遂するプロフェッショナル集団だということもある。その両面ですね。

そんなことを考えながらNFLのプレーオフを観戦している今日このごろです。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。一般社団法人MURA理事。東京都オリジナル品種普及対策検討会委員(2019年度〜2021年度)。

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