株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2018.08.09

東京の農家さんは2刀流!

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

大谷翔平選手、大活躍ですね。

このブログを書いている前日も、3番DHで出場して、12号3ランを含む4打数2安打3打点で、1盗塁。
ものすごい人が現れたものです。
いまは投手としての役割はお休みしていますが、こちらも4勝1敗で防御率3.10と堂々たる数字です。

ふたつの才能を併せ持つ、ということはものすごく大変というか、珍しいことだと私たちは知っています。
かつてマイケル・ジョーダンが野球に挑戦したこともありましたが、それは挑戦のまま終わりました。

ビジネスの世界でも、ふたつの才能を併せ持つのは大変なことです。
もちろん、たとえば京セラ創業者の稲森和夫氏は、高名な経営者でしたが、素晴らしい技術者でもあったわけで、そういう例はあることはあります。でも、そういうことは稀です。
飲食店業界においては、腕ききの料理人が一流の飲食店経営者となれるわけではないし、その逆も然りであることはよく知られています。

しかし、東京の農業はそれを求めている部分があります。東京の農業生産者さんは、たいがい、自主独立の経営をしています。

というのも、地方では農協が大部分の農産物を販売してくれるわけですが、東京では農協の販売機能は共同直売所を除くとありません。だからそれぞれ農家さんが独自に販路を持っています。
それは、決して悪いことではなく、メリットのひとつの例としては、農家さん自身がいろいろと工夫するモチベーションを高めている点があげられます。

ただ、やはりタイヘンだなと思うのは、栽培もしなくてはならない、販売もしなくてはならないというその2方面作戦をつねに展開する必要があることです。
私は畑を耕したことはないですが、傍から見ても、農業技術というのは本当に奥深いものです。まあ、野球選手だろうとどんな職業だろうと同じだと思いますが、その分野を究めるためには相当の努力が必要です。

一方で販売も、これはこれでたいへんなものです。お客様の需要をキャッチし、それを商品やサービスに反映させ、情報を発信し、同時にコストも抑える。スーパーと取引するならバイヤーさんと、飲食店と取引するなら料理人と、円滑なコミュニケーションが取れなくては商売が長続きしません。正確な請求書を発送するといった事務処理能力も必要です。

なので、私は東京の農家さんを「2刀流の農家」と呼んでいます。
東京では、栽培技術と販売技術、両方を併せ持たなくてはならない。

そして、私たちがお付き合いしている農家さんの多くは、この2刀流を実現しています。これは尊敬に値することだと思います。

そうした敬意を胸に置きつつ、一方で思うことは、もう少し農作業や農業技術を高めることに集中できれば、もっと東京の農業は助かるのではないか、ということです。

スーパーのバイヤーさんに電話をかけたり、宣伝をしたり、POPを書いたり、売れ行きをエクセルで分析したり……。
そういうことは「餅は餅屋」ということで、必ずしも農家さんが得意である必要はないかもしれません。もちろん、それもできて品質も高い農家さんも東京には何名もいらっしゃるのですが、全体からすればレアケースだと思います。

仮にご本人が2刀流ができたとしても、息子さんも2刀流でいけるのか、お孫さんはどうか、と考えていくと、なかなか大変な話です。

現状、エマリコくにたちは、それほどたくさんの農作物を売ってはいませんから、あまり偉そうなことは言えません。ただ、私たちが集荷して販売することで、少しでも農作業の方に力を注げれば、農作物の品質や収量に少々貢献できるのではないかと考えて日々集荷に回っています。

将来的な構想としては、マーケティング戦略の支援もしていきたいと思っています。
パッケージデザインの提案などは機会があればさせていただいていますが、さらに農家さんの経営スタイルや栽培品目にあわせて当社以外の販路を紹介したり、計数分析を手伝ったり、そういう動きもしていきたい。
あくまで構想ですが。

なにより大事なことは、農家さんは販売は不得意だったとしても、栽培は得意でないといけないということです。
大谷選手は2刀流をやめようと思えば、バッターかピッチャーかどちらか好きな方を選択することができますが、農家さんの場合は選択できません。栽培技術の追求の方はやめられない。

なので、「販売技術の方はすべてエマリコにお任せください!」と本当は声高に言いたいところ……なのですが、まだまだ力不足なことを痛感する日々です。

エマリコは「1刀流」の農家さんでも農業経営が続けられるように、どうにかしていきたいという強い思いは持っています。
この思いに販売技術の実力が伴うのは何年後か……どうかご期待ください。

そして、裏を返せば、エマリコが自社の畑を持つ予定はありません。餅は餅屋、ですから。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。第3次国立市農業振興計画審議会委員(2016年)。

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