株式会社エマリコくにたち

拝啓、うまい!に背景あり

社長のBLOG

2019.09.21

需要のある所に供給ができるという基本ロジック

拝啓 東京農業を応援いただいている皆様

有機農法について、東洋経済に以下の記事が掲載されていました。
『「オーガニック後進国」日本の残念すぎる真実』
https://toyokeizai.net/articles/-/302815

煽りすぎのタイトルは、この手のWEBニュースによくあるものなのでさておくとして、このなかで農業ジャーナリスト氏が言うことには、日本でも多くの有機農家が成功しているので有機農法をやらないのは「要はやる気の問題だ」と発言しています。
これには強烈な違和感を感じます。

日本が自由資本主義である以上、農業も商売なので、売れればやるし、売れなければやらないという基本的な原理は他のビジネスと同じです。今日も明日も家族を養っていかなければならない農家に、農法の変更というリスクを取れというのは外野がとやかく言えることではない。
念のため申し添えると、有機農法が広がること自体には私も賛成です。
(この記事が指摘しているように手続きの問題で有機を名乗らない農家は多いです。当社の取引農家にも無農薬でやっている方もいますが、法律上、店頭でその表示はできません。)

しかし、自由資本主義であるからには、需要が先で、供給が後です。とかく農業分野ではその経済原理の大本があまり理解されていないことが多いように感じます。

車のディーラーは環境によいEVだけを売り、ガソリン車は排除すべきだ、という主張は聞いたことがありません。EVにはまだ車のディーラーが食べていけるだけの需要がないからです。

結局のところ、経済原理からいえば、もし有機農法の農家が単純に増えるだけだと、有機農産物の供給が多くなって価格が下がり、むしろ既存の有機農家の経営を苦しめることになります。
記事中にもある豊岡のコウノトリ米の取り組みは素晴らしいですが、それが成功例なのは他と差別化されているからです。みんなが同じことをやったなら、価格は下がります。

同じことは、農業振興政策、特に耕作放棄地の対策にも言えます。
日本の人口は減っていくので、単純に農産物の供給量を増やすことは価格を下落させ、既存の農家を苦しめることになります。ものすごく単純な原理なのですが。
耕作放棄地を耕すことは、各自治体レベルの政策としては正しいですが、日本全体の農業政策からはストレートには正しいとはいえません。
(もちろん、その畑で新しい需要を生むような作物を作ったり、輸出用の作物を作るなら話は別です。)
基本的に、需要を増やすことに農業振興予算は使われるべきだと思います。

ちなみに、長期的な構想として、私は東京の農産物を輸出したいと考えています。
それはTOKYOブランドが海外で有用なのではないかと思っているのと同時に、新しい需要をどこかに求めていかないとマクロ的に日本の農業が元気になることはないからです。

さらに、東京の農産物でお酒をつくるというのも積極的に取り組みたいと思っています。とくにビールなどは輸入作物で作られていることが多いですから、地元の麦やホップを使ったクラフトビールは、国産農産物の新しい需要としてカウントできます。
そうしたマクロ的な意味での需要開拓も、農産物の中間流通業者である私たちの仕事だと思います。

菱沼 勇介(ひしぬま ゆうすけ)
プロフィール

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株式会社エマリコくにたち代表取締役。
1982年12月27日生まれ。
農地のない街・神奈川県逗子市に育つ。
一橋大在学中に、国立市にて空き店舗を活かした商店街活性化活動に携わる。2005年に一橋大商学部卒業後、三井不動産、アビーム・コンサルティングを経て、国立に戻る。NPO法人地域自給くにたちの事務局長に就任し、「まちなか農業」と出会う。2011年、株式会社エマリコくにたちを創業。第3次国立市農業振興計画審議会委員(2016年)。

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